◎マルジェラの歴史となぜ評価されているのかに迫る
・はじめに
1988年、「メゾン・マルタン・マルジェラ」がパリにて設立されました。現在のブランド名は「メゾン・マルジェラ」(Maison Margiela)。
設立者はマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)。世界中に熱狂的なファンを持ち、ファッションの歴史に大きな影響を与えたブランド、人物であると言われています。
・メゾン・マルジェラについて
歴史
メゾン・マルタン・マルジェラは1988年、フランスのパリで誕生しました。マルタン・マルジェラが自身のレーベルとして設立したもので、1989年の春夏季のパリコレクションでプレタポルテ(高級既製服)としてデビューしました。日本では2000年に初めて、東京・恵比寿に旗艦店が誕生しています。2002年よりディーゼルのレンツォ・ロッソが創立したOTBグループに属しており、日本での展開は現在マルジェラ・ジャパンが行っています。
2014年、ジョン・ガリアーノがクリエイティブディレクターに就任し、2015年1月にブランド名が「Maison Margiela」に改名されました。
特徴
マルジェラが歴史に名を残すこととなった要因の一つは「反モード(アンチモード)」です。初めてのパリコレクションでは、それまでの流行や「モードとは斯くあるべき」といった概念を覆し、「デストロイ・コレクション」と称されました。1980年代の高級志向のアンチテーゼとして、軍服のリメイクやダメージデニム、ボロボロのニットなどで作り上げた、貧困者風のスタイル(ポぺリズム)を提案。既存のきらびやかなファッションショーやコレクションを真っ向から否定しました。
世に溢れる様々な物体を与えられた役割や用法から解放することで、「脱構築(デコンストラクション)」という流れをファッション界に持ちこみました。ダメージデニムやミリタリーファッション、ペインティング加工などはマルジェラが作ったと言われています。
またそれまで流行していたゆったりしたシルエットに対し、体にフィットするタイトなジャケットやパンツを提案しました。それ以降タイトシルエットが流行し、ファッションの歴史に大きな変化をもたらしました。
・マルタン・マルジェラという人物について
メゾン・マルタン・マルジェラの設立者であるマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)は、1957年4月9日、ベルギーで生まれました。1977年にアントワープ王立芸術学院へ入学。「アントワープの6人」と呼ばれる、ダーク・ビッケンバーグ、アン・ドゥムルメステール、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク、ドリス・ヴァン・ノッテン、ダーク・ヴァン・セーヌ、マリナ・イーらとは同期にあたります。彼ら同様、自身も1980年代のパリコレクションで「黒の衝撃」と評され一世を風靡していた「コムデギャルソン」(川久保玲)の影響を強く受けたと言われています。
1984年、ジャン=ポール・ゴルチエのショーに感銘を受けてゴルチエのアトリエに入り、デザインのアシスタントとして働きました。1988年に自身のブランド「メゾン・マルタン・マルジェラ」を立ち上げ、パリコレクションでデビュー。1997年から2003年にかけては「エルメス」の女性向けコレクションのデザイナーも担いました。
マルタン・マルジェラは表舞台に一才出てこないことで有名で、ミステリアスな人物として知られていました。2008年のコレクション以来、ブランドとの関わりはなく、引退状態にあります。
・カレンダータグについて
現在、マルジェラの服や小物には、「カレンダータグ」と呼ばれる0~23までの数字が書かれた白地の布が縫い付けられています。タグには本人の名前やブランド名は書かれていませんが、◯で囲われた数字が書いており、このタグからコレクションラインを読み取ることができます。この表記方法は、コレクションにメンズラインが加わった1999年頃から採用されています。数字が表すコレクションラインは以下の通りです。
0 – 手仕事により、フォルムをつくり直した女性のための服
0 10 – 手仕事により、フォルムをつくり直した男性のための服
1 – 女性のためのコレクション(ラベルは無地で白)
4 – 女性のためのワードローブ
3 – フレグランスのコレクション
8 – アイウェアのコレクション
10 – 男性のためのコレクション
14 – 男性のためのワードローブ
11 – 女性と男性のためのアクセサリーコレクション
12 – ファインジュエリーのコレクション
13 – オブジェ、または出版物
22 – 女性と男性のための靴のコレクション
MM6 – ♀のための服
タグは敢えて外しやすい様に、4つの糸だけで縫い付けられています。諸説ありますが、マルタン・マルジェラには「ブランドではなく、服そのものに価値を見出して欲しい」という思いがあり、「服についたタグを外して着て欲しい」と考えていたからだと言われています。
実際に切って着用する方もいますが、この白タグと4つの糸がマルジェラの象徴にもなっています。
・代表的なアイテム
タビシューズ
マルジェラと言えばタビと言われる程、代表的なアイテムです。日本の15世紀の労働靴であった足袋からインスピレーションを受けたタビシューズには、ブーツやフラットシューズ、バレエシューズ、サンダルなど様々な形があります。2017年からはメンズラインの展開も始まっています。
ジャーマントレーナー
1970年代にドイツ軍がトレーニングをする時に履いていた靴がモデルになったものが、ジャーマントレーナーです。カーフレザーやラムレザーから作られており、とても柔らかく履き心地が良いと言われています。タンにはカレンダータグがデザインされ、ヒールカップ部分には4つの糸がデザインされ、細かいディテールに拘った一足です。
ドライバーズニット
「ドライバーズニット」は、ブランド設立当初から長く人気の、マルジェラの定番アイテムです。トラック運転手が着用していたニットから着想を得ており、快適に運転できるようにダブルジップを採用し、ポケットをなくすことで動きやすさにこだわっています。ウールではなくコットン生地のため、首元の肌あたりが良く、着心地が良いのがポイントです。
ハの字ライダース
マルジェラを代表するアイテムの一つであるライダースジャケットは、首から腰にかけてハの字にデザインされたジッパーが印象的です。1998年にリリースされてから今まで、一度もデザインが変わっておらず、長年愛されているアイテムです。ジップが5つあるため、「5zip」とも呼ばれています。上質な牛革を使用しており、着るたびに体に馴染む長く着用できるアイテムです。
エイズTシャツ
1994年から現在までリリースし続けている「エイズTシャツ」は、毎シーズン違ったカラーで展開され、下記の英字のテキストが印字されています。
「THERE IS MORE ACTION TO BE DONE TO FIGHT AIDS THAN TO WEAR THIS T-SHIRT BUT IT’S A GOOD START (エイズと闘うためにすべき活動はもっとあるがこのT-シャツを着ることは良い始まりだ)」
このテキストはTシャツのVネック部分にプリントされているため、着用するとネックラインの内側の文章が隠れてしまい、全文を読むことができません。メッセージに興味を持った人と着用者とのコミュニケーションが生まれるきっかけになるよう、配慮したデザインになっています。
・まとめ
メゾン・マルジェラは世界中に熱狂的なファンを持ち、創業当初から愛されているブランドです。ブランドを象徴する脱構築的なデザインは他にはない唯一無二のものであり、これからも驚きとクリエイティビティに溢れたブランドであり続けることでしょう。
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